研究概要 |
1. 熱帯擾乱が熱帯低気圧のライフサイクルに与える影響の研究 熱帯低気圧の一種である台風は、熱帯に存在する他の擾乱(熱帯波動など)の影響により発生や急発達が引き起こされる可能性が観測から指摘されている。本年度の研究では格子間隔14kmという高解像度の全球モデルを用いる二とにより、北太平洋西部に発生した2006年台風21号のライフサイクルにおける熱帯擾乱の役割を調べた。この結果、太平洋中部から西進してきた熱帯擾乱が台風21号発生の起源であり、また、アフリカ付近から東進してきた熱帯擾乱は台風21号の急発達に影響していたことを感度実験により示すことに成功した,この研究は一つの低気圧のライフサイクルが地球上の広い範囲の影響を受けることを全球超高解像モデルを利用して具体的に示すことができた点に大きな意義がある。 2. 熱帯低気圧の発生時における環境場の研究 2008年5月にミャンマーに上陸して大きな被害を引き起こしたサイクロンNargisを例として、サイクロン発生時における環境場の特徴を調べた。その結果、Nargisが発生したベンガル湾では東風から西風にモンスーンが変化する時期であり、それに伴い鉛直シアが弱いというサイクロン発生に都合の良い環境場の条件を満たしていることがわかった。数値シミュレーションでも環境場が変化することでサイクロンの発生確率が高くなることを示すことができた。 3. 低気圧トラッキング手法の開発 本年度はイギリスReading大学のVidale博士の協力の下、空間フィルタを用いることにより低気圧トラッキング手法が、従来よりも高解像度のデータに対しても適用可能であることを確認できた。
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