1. 熱帯低気圧の研究 前年度までに大筋の得られた2つの研究について、さらに詳細な解析を加えたものを論文として国際誌に投稿した。1つは2008年にベンガル湾で発生してミャンマーに大きな被害をもたらしたサイクロンNargisに関する研究である。ベンガル湾の大きなスケールの大気場とサイクロン発生との関係を調べ、さらに数値シミュレーションによる発生の予測可能性を調べた(この研究は気象集誌に受理された)。もう1つは、2006年にフィリピンで大きな土砂災害を引き起こした台風Durianの数値シミュレーションであり、熱帯の波動による外部強制力が台風の発生と急発達に影響を及ぼしていることを示した(この研究はGeophysical Research Letters誌に受理された)。 2. 温帯低気圧の研究 全球モデルを用いた氷河期の数値シミュレーションに関する論文が、Journal of Climate誌に掲載された。この論文では、気候変動に伴う東アジア域の風や降水の変化を評価し、大きなスケールの場の変化に伴い中緯度の温帯低気圧(前線構造を持つ低気圧)の活動も変化することを示した。 3. 高緯度の低気圧の研究 高緯度にはポーラーロウと呼ばれる小型の強い低気圧が発生する。ポーラーロウの性質と大きなスケールの大気場との関係を数値シミュレーションで系統的に調べた研究を行ってきたが、この研究の一部が日本気象学会に評価されて山本・正野論文賞という若手研究者の賞を受賞した。
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