研究課題
1978~2002年までの高時空間解像度の降水量格子点データを用いて、中国黄河流域の雨季(7~8月)の降水量変動の時系列解析を行った。同領域の降水変動は主に7~20日周期の季節内変動と3~6日程度の中緯度短周期擾乱によってもたらされる。また、台風本体や台風の影響を受けた前線活動の活発化も短周期変動に寄与することがある。同領域の雨季の総降水量の年々変動は、季節内変動の分散と有意な正の相関を示すが、短周期擾乱との相関は低かった。これは、同領域の雨季降水量に、季節内変動が重要な役割を持っていることを示している。次に、黄河流域の雨季の降水の年々変動の解析を行った。黄河流域の夏季降水量に伴い、上層大気の亜熱帯ジェット気流上では顕著な波列偏差が見られた。降水量が多い年は、亜熱帯ジェット気流に沿って、黄海上空で高気圧偏差、チベット北部・モンゴル高原上空に低気圧偏差、チベット西部に高気圧偏差が見られる。黄海付近の高気圧偏差は上~下層で順圧的な構造であり、黄河流域に南からの豊富な水蒸気をもたらすため、降水量を増加させる。降水量が少ない年は逆符号の偏差となる。上層の波列偏差は亜熱帯気流上のロスビー波と解釈できる。また、年々変動をもたらす上層波列偏差の符号は、亜熱帯ジェット気流上の波列偏差を伴う波の季節内変動の活動によって決まりうることが示唆された。これらの結果は、近年降水量が減少しつつある黄河流域の降水システムと年々変動のプロセス研究の基礎資料となる有益な情報である。また、南アジアの陸上モンスーン域であるバングラデシュの降水の季節内変動が、中国東部の対流活動と有意な関係があるいう結果も得られた。
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Monthly Weather Review 137
ページ: 2286-2304
International Journal of Climatology (印刷中)