日本海帯状降雪雲は冬季寒気吹き出し時に最も活発な降雪をもたらす雲システムの1つで、降水の集中化を引き起こすことによってしばしば大雪をもたらす。当該年度はこの帯状降雪雲のマルチパラメーターレーダー観測、および降雪粒子の接写観測を行った。現地視察と交渉ののち平成20年12月に名古屋大学のマルチパラメーターレーダーを石川県宝達志水町押水庁舎屋上に設置した。その後、平成20年12月20日から平成21年3月12日までレーダーを稼働しデータを取得した。このレーダー観測中で強い寒気の流入した4つの期間、のべ20日にわたって金沢大学角間キャンパス内に待機し、降雪粒子の接写観測を行うとともに、状況に応じてインターネット経由でレーダー走査方法の変更を行った。平成20〜21年にかけての冬の寒気吹き出し時の気圧配置が従来の典型的な西高東低とは異なる場合が多く、帯状降雪雲がレーダー観測範囲内に入ることは少なかったものの、帯状降雪雲のデータを数事例取得できた。レーダーデータの解析プログラムについて、基本的なものは整備されてきた。マルチパラメーターレーダーデータを用いて粒子識別を行う方法があり、このプログラムのプロトタイプも整備されてきたが、この検証についてはまだ十分にできていない。したがって降雪粒子の接写観測データおよび金沢大学の地上降雪粒子観測システムの直接データを利用して次年度に検証を行う。観測後には、これらの観測の初期解析結果について発表を行った。これらの発表では、これまでほとんど認識されていないものの、非常に活発な降雪をもたらす帯状降雪雲とは異なる雲システムの存在についても、今回の観測データをもとに指摘した。
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