日本海帯状降雪雲は冬季寒気吹き出し時に最も活発な降雪をもたらす雲システムの1つで、降水の集中化を引き起こすことによってしばしば大雪をもたらす。当該年度は、前年度行ったマルチパラメーターレーダー観測によって得られたデータを用いて、この降雪雲内部の固体降水粒子の分布を調べるための手法を作成した。この手法はマルチパラメーターレーダーで得られる偏波パラメータが、粒子の形状や落下姿勢、相などの情報を反映していることを利用して、空間を占める主要な粒子が雨、氷晶、雪、霰などのうちどの粒子カテゴリーであるかを推定する手法である。手法には粒子識別の最近の主流であるファジーロジックによる方法を用いた。各偏波パラメータについての粒子カテゴリーの存在の有無を決める式(メンバーシップ関数)は、使用したレーダーの波長に対応する過去の研究の理論的計算結果を使用した。 実際にこの手法を帯状の降雪雲に適用したところ、2~3割の領域が霰で占められており、その他の領域は主に雪片であった。ただし、これはある降水粒子が卓越する面積に関する見積もりであり、量的な見積もりについては今後の課題である。 この手法において得られる結果の精度向上のためには、直接観測との比較が必要不可欠であるが、そのためには地上観測や、さらには航空機観測が必要である。このことについては、金沢大学が地上観測の画像データから粒子カテゴリーを識別する手法を開発してきたので、この研究と協力してレーダーからの粒子識別との比較を進める準備を整えることができた。
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