地球大気における対流圏領域と成層圏領域が双方個に結合しているという対流圏-成層圏結合の認識が今では広く受け入れられている。この考えは、低緯度と中高緯度の両方で適用される。本研究では、対流圏-成層圏結合のうち特に上向きの影響について以下の二点を取り上げ、調査した。 1 中高緯度大気における上向き結合は、主として、対流圏から成層圏に伝播する惑星波によって担われている。東京大学気候システム研究センター(当時)・国立環境研究所などで開発されている大気大循環モデルのシミュレーションの出力データを用いて、成層圏に伝播する惑星波活動の変動に注目した解析を行った。成層圏に侵入する惑星波活動(南北熱フラックス)を鍵指標とした解析により、惑星波活動の強弱に伴う対流圏の波構造などを特定した:冬季北半球では、東西波数1及び2の惑星波が変動するのに対して、春季南半球では、専ら波数1の惑星波の変動が重要である 2 熱帯(低緯度)成層圏では、準二年周期振動(QBO)と呼ばれる振動現象が卓越している。熱帯の大気(対流圏)-海洋系に存在するエルニーニョ・南方振動(ENSO)と、QBOの関連が以前から指摘されているが、その証拠はいまだになかった。ここでは、赤道成層圏東西風のラジオゾンデ観測データを解析して、ENSOとともに、QBOが変調することを示した:すなわち、ラニーニャ時に比較して、エルニーニョ時にQBOの振幅は小さくなり、位相は速く伝播する。
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