大気海洋結合モデルを用いた地球温暖化予測実験において、温室効果ガス濃度とエアロゾル排出量のシナリオ(排出シナリオ)が異なると、単位気温変化あたりの全球平均降水量変化率が変わることが近年しめされてきた。しかし降水量変化率が何故排出シナリオに依存するのかは明らかになっていない。本研究では、降水量変化率が排出シナリオに依存する要因を解明することを目的とする。 平成20年度は、エアロゾルの第1種、第2種間接効果を陽に扱うことのできる大気海洋結合モデル(MIROC3.2)を用いて、「気候変動に関する政府間パネルの排出シナリオに関する特別報告(IPCC SRES)」のA2とB1の2種類の排出シナリオに沿った人為起源外部要因切り分け実験を行った。切り分けた外部要因は、(1)二酸化炭素などの温室効果ガスの濃度変化、(2)炭素性エアロゾルの排出量変化、(3)硫酸性エアロゾルの排出量変化、(4)対流圏と成層圏のオゾン濃度変化の4種類である。また全ての外部要因を2000年条件で固定した2000年固定実験を行った。全ての実験について、3から10メンバーのアンサンブル実験を行い、内部変動の影響を小さくした。これらの実験を統計的に解析することで、外部強制力に対する応答の線形性が保たれていることを確認した。これによって、降水量変化率の排出シナリオ依存性には、強制力-応答関係の非線形性は、重要な役割を果たしていないことがわかった。
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