成果: 1. 前年度の当研究課題において開発した対流圏エアロゾルデータ同化システム(ベースは気象研究所開発の全球エアロゾルモデルと気象庁数値予報課開発の4次元アンサンブル・カルマン・フィルタ)の改良を進めた。それによって、人工衛星搭載ライダーの観測のみでなく地上設置ライダー等の様々な種類のエアロゾル観測をすべて同時にデータ同化することが可能となった。さらに、モデルバイアス(=系統誤差)の動的推定モジュールをシステムに組み込んだことによってデータ同化解析精度、特に黄砂の地表面放出量の解析精度が向上した。このシステムを用い、2007年3-5月のダスト及び硫酸エアロゾルの全球アンサンブル解析値を作成した。 2. 上記のダストエアロゾル解析値を予測初期値として用い、東アジアにおける黄砂濃度のハインドキャスト実験(=過去の現象の予測計算を行い、その結果を既知の独立観測によって採点する予測検証手法)を行なった。実験は未だ最適パラメータ設定などの技術情報を収集する予備的段階であるが、予測値とSYNOP(WMO地上実況気象通報)観測との比較によって、解析値の改善が予測精度の向上に繋がっていることを確認している。 意義・重要性: 上記の成果は大気微量成分データ同化システムの開発として世界最先端の水準であるが(Sekiyama et al. 2010)、そのプロダクトである解析値やモデルバイアス値も気候変動予測の研究あるいは中長期気象予報の改善に必須の情報として活用できる。また、当研究課題の研究目的である大気微量成分予測技術の基礎確立に向けてもダストエアロゾル予測精度を向上させる初期値およびモデル誤差情報を入手できた意義は大きい。
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