平成21年度は、Large-Eddy Simulationに基づいた数値実験を通して乱流の2次の統計量の自己整合性の検証についての解析と、大型風洞を用いた境界層乱流の実験を主に実施した。 数値実験を用いた乱流の2次の統計量の自己整合性については、解析をすすめたところ、一貫性のある結果が得られうることが明らかとなった。今年度はその成果のとりまとめを行い、国際学会で成果発表を行うとともに、国際学術誌に論文を投稿した。これと合わせて、多くの気象モデルで用いられている乱流モデルの一つであるMYNNモデルの定式化について検討を行った。その結果、MYNNモデルは境界層の発達過程をよく再現することが指摘されている一方で、強安定の場合の乱流輸送に関して、現状のMYNNモデルは最近の研究で報告されている結果と整合しない可能性があることが分かった。この問題に対処するため、MYNNモデルについて見直しをはかり、新たな定式化を考案した。 大型風洞を用いた実験については、密度成層を含んだ境界層乱流を実施し、運動量および熱輸送の鉛直分布について解析を行った。中立成層の場合については妥当な結果を得ることができたが、密度成層がある場合の温度の変動や熱フラックスについては、現状では実験で得られた結果は過小評価となっている可能性があることが示唆された。この過小評価の原因を特定するため、今後、実験の設定や温度の測定手法についてさらに検討をすすめる予定である。
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