地表面から大気に放出される熱と水蒸気の比率は、地表面の土壌が持つ性質や、植生の状態に強く依存する。その比率が、地表に近い大気の状態に影響することが知られているが、地表から遠い大気で発生する降水雲の性質にどのような影響を与えるかは、これまでのところわかっていない。これらは、経済の発展に伴った、土地の利用状況の改変によって、大気がどのような影響を受けるかについて評価を行う上で、必要不可欠な基礎知識である。本研究は、陸面の状態が降水雲の性質に与える影響を定量的に評価するため、雲内部の物理過程を再現できる高解像度の数値モデルを用いて、地表の状態を変えた実験を、複数実施し、陸面状態の改変に伴う雲の構造や、発達速度の変化を調べる事により、降水雲の特性に与える影響を定量的に評価して、陸面状態に対する降水雲の依存性を理解することを目指している。 平成20年度には、本研究に必要な計算機環境の整備と、数値実験の動作確認を行い、さらに、平成21年度には様々な地域と気候を想定した地表面状態のパラメータを用いた数値実験を行った。具体的には、土壌水分や植生に関するパラメータを段階的に変化させた実験を複数実施し、パラメータの変更に対応した雲の性質の変化を調べた。この結果、陸面状態の変化に対応して大気境界層の熱力学特性が変質し、その結果として雲の特性(雲底高度、降水強度、寿命、雲底下での蒸発効率など)が変化することがわかった。
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