本研究計画では、磁気嵐の主相において消失する放射線帯電子の行方を実証的に調べる事を目的としている。放射線帯電子が大気圏に降下し、消失する現場を観測的に調べる手段として、降下電子が電離圏D領域で局所的な電離を引き起こし、これによって地上-D領域間を伝搬するVLF・LF帯標準電波の位相・振幅が変調を受ける現象を利用する。2009年度は、東北大学に試験的に設置したVLF・LF帯標準電波受信装置を用いて、7月22日の皆既日食に伴う電離圏D領域の電離状態変動を高感度で観測する事に成功し、標準電波受信装置の感度を確認することが出来た。更に、2008年度に開発・製作したVLF・LF帯標準電波受信装置2式の内、1式をノルウェー・ニーオルセンの国立極地研究所ラベン基地に設置し、観測を開始した。また、観測データを1日に1回、インターネット経由で東北大学に自動転送する仕組みを構築した。ニーオルセンは放射線帯外帯に相当する磁気度よりも緯度が高い極冠域に位置し、中・低緯度域の様々な経度域から送信される標準電波を同時且つ高時間分解能で観測することが可能となった。特に、送信局からの伝搬距離が短いヨーロッパの経度域から送信される標準電波を高感度で観測することが出来る事を確認した。これによって、放射線帯外帯から大気圏に降下する高エネルギー電子を常時観測する態勢が整い、今後、磁気嵐が発生し次第、観測データの解析を実施する。
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