研究課題
地球放射線帯の外帯領域は、磁気嵐の主相に消失する事が知られているが、そのメカニズムは未解決問題として残されている。近年の人工飛翔体観測の統計解析より、磁気嵐時のプラズマ波動の空間分布に強い地方時依存性が確認され、ピッチ角散乱による高エネルギー電子の大気への降下が予想される。本計画では、高エネルギー電子の大気への降下が、電離圏D領域と地表面間を伝搬する人工VLF/LF帯電波の信号に強い変調をもたらす事を利用し、放射線帯電子が大気へ降下する現場を捉える事によって、磁気嵐主相での放射線帯電子の消失が、地方時方向にどの様に局在し、どのように時間発展するのかを観測的に把握することを目的とする。先ず、平成21年度にノルウェー・ニーオルセンの国立極地研究所基地に設置した受信機のデータから、磁気嵐主相時、並びにサブストーム時における、高エネルギー電子降下の発生のタイミングと磁気地方時依存性に注目した統計解析を実施した。この結果、朝~昼側ではサブストームonsetから電子降下現象発生までに時間差があり、この時間差は100keV~数100keV電子のドリフト時間で説明できる。夕方側ではサブストームonsetと同時か、先行して電子降下が生じており、サブストームonsetに伴って広い周波数帯域で発生する波動に伴い、強いピッチ角散乱が生じた事を示唆する結果が得られた。更に、H22年度は放射線帯外帯からの電子降り込みを、オーロラ帯の影響を受けずに検出するため、サブオーロラ帯に位置するカナダ・アサバスカにニーオルセンと同様の受信機を設置し、観測を開始した。これらの観測局のデータは逐次、自動的に東北大学に転送され、磁気嵐発生時にデータを迅速に確認出来る体制を構築した。
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