放射線帯の高エネルギー電子のダイナミクスに重要となるホイッスラー波動の励起および粒子加速過程を理解するために、波動粒子相互作用を組み込んだ巨視的モデルの開発とそのパラメータを用いた微視的計算とを組み合わせることを目指している。本年度は、巨視的モデルの開発と実際の磁気嵐時のシミュレーション、および微視的シミュレーションとの結合について基礎的な検討を行った。 巨視的モデルにおいては、ホイッスラー波動の励起をhot electronの分布関数および背景熱的プラズマのデータを用いて線形成長率を計算することで行っている。開発したモデルを用いて2002年10月に発生した磁気嵐を対象とした計算を行ったところ、磁気嵐主相において朝側のプラズマ圏の外側で強いホイッスラー波動の励起が観測された。これは、プラズマシートからのhot electronが磁場ドリフトによって朝側に移動していること、および熱的プラズマ密度の低いプラズマ圏の外側ではホイッスラー波動の成長率が高いことに対応している。また、磁気嵐中のホイッスラー波動の成長率の時間変化は、注入されるhot electronの時間変動とよく対応していることも明らかになった。このシミュレーションの結果をCRRES衛星の結果と比較したところ、ホイッスラー波動の空間分布の磁気活動度依存性などは、観測とよく一致した。この結果について、国内学会において報告を行った。 一方、微視的シミュレーションについては、巨視的シミュレーションから得られる密度や温度、プラズマ特性パラメータを用いて、国内研究協力者の開発しているシミュレーションにおいて計算を行った。その結果、温度異方性によって、ホイッスラー波動の線形段階の励起を確認した。
|