本研究の目的は、数十年の間不可能とされてきた磁気嵐の予測を可能にすることである。磁気嵐の原因となる太陽風の強い南向き磁場を予測する手段として、コロナガス大規模噴出現象(CME: Coronal Mass Ejection)の3次元磁気流体シミュレーションと太陽風観測のデータ同化を行い、地球に向かう高速のCMEが伝播中に作り出す南向きの磁場を再現できる太陽風モデルを作り出すことが本研究の目標である。また、実際に運用可能な数値宇宙天気予報の実現も本研究の目標であり、これらの基盤作りが平成20年度の目標であった。平成20年度は、太陽風磁気流体コード自体の改良や、複数の仮定に基づく背景場の導出方法、磁場も含むCME放出方法に関する基礎研究に加え、惑星間空間シンチレーションを行っている名古屋大学太陽地球環境研究所の太陽風グループと協力し、太陽風速度分布のダイナミックなデータ同化を実現する概念設計を行った。また、並行して、名古屋大学・三好由純氏とスタンフォード大学・林啓志氏の協力により、コロナ・太陽風・放射線帯の数値宇宙天気予報の実装とリアルタイム試験運用に成功するとともに、CMEと背景太陽風の相互作用に関する基礎研究から、太陽風の急激な速度差で発生した低密度領域に起因して放射線帯高エネルギー電子が異常増加する仕組みを解明した。得られた研究成果は、招待講演として国内外の学会で研究発表を行うとともに、論文発表も行った。
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