本研究の目的は、磁気嵐の予測を可能にするコロナガス大規模噴出現象(CME : Coronal Mass Ejection)の3次元磁気流体シミュレーションを開発することである。平成21年度は、リアルタイム数値宇宙天気予報を実環するための基礎研究を行うことが目標の一つであったが、リアルタイムで取得される実太陽データに基いた境界条件を用いて、1年間以上にわたって自動的に運用可能な太陽風シミュレーションコードを開発し、名古屋大学の専用ウェブサイト(http://hbksw1.stelab.nagoya-u.ac.jp)で公開した.この結果は、動的な境界条件による数値宇宙天気予報の先駆けであり、JpGUにおいては招待講演も行った。CMEの入力方法については、データ同化手法も含めて、特に磁場の入力が重要な研究課題として残された。ひとつの新たな手法として、スフェロマック型の磁場をパラメタライズして用いるCME入力手法を開発した。その結果、2006年12月の磁気嵐を引き起こす強い南向き磁場を、ひので衛星の太陽磁場データに基いて再現することができ、国際学術誌Journal of Geophysical Researchに発表した。また、スフェロマック型の磁場を導入する観測的な根拠として、太陽活動領域と太陽風の磁気雲のヘリシティを比較する統計解析を共同研究し、その結果を国際学術誌The Astrophysics Journalにおいて発表した。
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