研究概要 |
惑星は何故各々に特有な大気を持つのだろうか?生物の住む地球の大気が特異なだけではなく,各惑星大気の性質は各惑星の重力,太陽輻射の差だけでは説明できないほど異なっている.しかし地球以外の惑星大気に関する情報は依然として少なく,この理由は未知のままである.本研究では大気光の輝線幅から惑星大気の温度,風速場を捉えることで各惑星の大気生成過程の解明を行うことを目的とし,それを可能にする高い波長分解能を持つ惑星大気光観測器の開発を行った.惑星周回軌道からの観測を見据え,分光素子としてファブリペロー干渉計を採用した.ファブリペロー干渉計で達成できる波長分解能の上限は鏡面の平面度に依っており,現在達成されている平面度は3nm程度であるが,本研究では従来と異なる検査法を取り入れて1.2nmの平面度を達成することができた.従来の手法はフィゾー干渉計を用いて検査を行なっているのに対し,本手法はファブリペロー干渉計を用いて検査を行なうものである.本手法は,現在特許出願中である.本年度は岡山天体物理観測所にて水星大気中のナトリウムが発する大気光の検出を行なった.過去に行なわれた観測の結果から,水星大気は主に太陽風スパッタリングによって地表から放出されると考えられている.しかし,岡山で得られた観測結果は大きな時間変動を示さず,この説には否定的であった.来年度は,本年度で開発したファブリペロー干渉計を用いて水星大気光観測を行ない,大気放出速度を求めることで大気生成過程の解明を目指す.
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