研究概要 |
本研究では,北西太平洋が果たす地球気候変動の役割に注目し,古地磁気層序,微化石層序ならびに酸素同位体層序にもとづく信頼性の高い年代モデルが構築された深海底コアを用いて,更新世の黒潮~親潮混合水域の古海洋環境変遷史の解明ならびにブルンヌ正磁極期中期に起こったMid-Brunhes Climatic Eventと呼ばれる全球規模の大気・海洋循環の長期変動のシグナル抽出を目的としている. 平成21年度は,最重要課題として,ブルンヌ正磁極期の黒潮~親潮混合水域における珪酸塩生物の生産量を復元するため,地球深部探査船「ちきゅう」の下北半島沖慣熟航海コア試料CK06-06 902-C9001C(以下,C9001Cコアと略す)の生物源オパールの変遷を調査した(高知大学海洋コア総合研究センターを利用).分析に際して,試料の前処理方法と実験手順を確立するため,また測定結果に正確性と再現性をもたせるため,試験試料をもちいての確認実験を行った.その上で,C9001Cコアの最上位から深度約160mまでの130層準(約1.5m間隔)について,試料の処理とオパール含有量の測定を実施した.その結果,C9001Cコアにおける海洋酸素同位体ステージ(MIS)8の後半~1までの生物源オパール変動データを得ることができた.この結果は,黒潮~親潮混合水域では初めてとなるデータセットであり,本海域の生物生産変化を復元する上で貴重な資料となる.また本年度は,初年度に得られた研究成果をとりまとめ,国内学会・研究集会にて報告するとともに国内学術雑誌に論文を公表した.
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