研究概要 |
本研究では,北西太平洋が果たす地球気候変動の役割に注目し,古地磁気層序,微化石層序ならびに酸素同位体層序にもとづく信頼性の高い年代モデルが構築された深海底コアを用いて,更新世の黒潮~親潮混合水域における古海洋環境変動ならびにブルンヌ正磁極期中期に起こったMid-Brunhes Event (MBE)と呼ばれる気候シフトのシグナル抽出を目的としている. 平成22年度は,ブルンヌ正磁極期の黒潮~親潮混合水域における珪酸塩生物の生産量を復元するため,地球深部探査船「ちきゅう」の下北半島沖慣熟航海コア試料CK06-06 902-C9001C(C9001Cコア)の生物源オパール量変動を調べた(高知大学海洋コア総合研究センターを利用).C9001Cコアの深度約177m~最下部までの131試料を対象として試料処理を行い,そのうち47点について生物源オパール量を測定した結果,同コアの深度約177~256mについて生物源オパール量データを得た.C9001Cコアの深度約177~256m層準は,海洋酸素同位体ステージ(MIS)13/12境界付近からMIS 9/8境界付近に相当する.この期間の生物源オパール量は平均で約18%であった.また,MIS 12/11境界付近ならびにMIS 9で30%を超える高い値が認められた.MBEの開始期とされる約43万年前はMIS 12/11の境界に相当することから,今回得られたデータは,MBE直後の北西太平洋における生物生産量を復元するための日本近海の標準データとして今後の研究に大いに資する.ただし,十分な精度が得られていない測定点もあるため,今後さらなる精査が必要である.また本年度では,前年度に得られた研究成果のうち,更新世の重要な生層序基準面のひとつである浮遊性有孔虫Neogloboquadrina ingleiのC9001Cコアにおける終産出層準とMISとの層位関係について,国際会議にて報告するとともに,論文として国際誌に投稿し受理された.
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