研究概要 |
1、かんらん石の化学組成分析 今までに得られたプチスポット火山の玄武岩について、Sobolev et al.(2007)で公表されている分析条件等を参照し、かんらん石結晶の特にNi,Mnに対して通常とは異なる高い電子線加速電圧と測定時間による分析ルーチンの確立を試みた。結果、高精度のデータを得るには、標準試料等の更なる検討が必要であることが判明し、目下データの高精度化に取り組んでいる。 2、リサイクル物質の特定 今までに化学組成が明らかになっているプチスポット火山の玄武岩について、初生マグマの微量元素組成を求め、予想されるリサイクル物質の微量元素組成を仮定した溶融モデリングの結果と比較したところ、沈み込んだ海洋性地殻の溶融では、プチスポットマグマ組成を説明することができないことが明らかとなった。同時に、可能性の高い物質として大陸下部地殻(e.g., Rapp and Watson, 1995)もしくは交代作用を受けたリソスフェアマントル(e.g., Pilet et al., 2008)が挙げられる。 3、新たなプチスポット火山から得られた玄武岩の分析 研究船かいれいKR07-06次航海で得られたプチスポット火山の玄武岩、およびKR07-07次航海によって新たに発見されたプチスポット火山の玄武岩に対して、鉱物化学分析・全岩主要および微量元素組成分析とSr-Nd同位体組成分析を行った。その結果、後者の化学組成は、これまでに見つかっていたプチスポット火山の玄武岩(前者を含む)とは異なることが判明した。以上の結果は、後者の起源となったリサイクル物質および溶融条件が、前者のものとは異なることを示している。 2および3の成果すなわち、ア)海洋地殻の地球深部からのリサイクリングが否定されたこと、イ)異なるリサイクル物質の存在は、太平洋上部マントル不均質性の起源のみならず、全地球規模の物質循環を理解する上で、極めて重大な制約である。上記1の結果や、同位体組成の時間発展モデリングおよび実験岩石学の結果(e.g., Pilet et al., 2008)と併せて、更に詳細に解析する必要がある。
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