研究概要 |
10年度の実施内容は以下の通りである. 1.タイ・インタノン帯の変成岩の広域温度・圧力見積もり,年代測定および塩基性変成岩の原岩推定. 2.ベトナム北部・レッドリバー剪断帯の温度・圧力履歴の解析と年代測定. 3.中国・三江地域の広域温度・圧力見積もり,年代測定および塩基性変成岩の原岩推定. これらの結果から,本課題の核ともいえる広域的な温度・圧力・時間・原岩条件の推定と温度・圧力履歴解析が終了し,インドシナ半島を構成する主要な小地塊(インドシナ・南中国・シブマス地塊)衝突域の造山帯形成テクトニクスについて,以下の様な新知見を得た. 1.インドシナ・南中国衝突域の痕跡は北部ベトナムから中部ベトナムまでの広範に認められ,その衝突時期は,ペルム紀後期(2億6千万年前),インドシナ地塊が南中国地塊下に沈み込み,その深度は非常に深い(地下70km以深). 2.インドシナ・シブマス小地形衝突域は中国・雲南省からタイ西部を縦断し,マレー半島に延長する.衝突時期はトリアス紀後期(2億1千万年前).シブマス地塊がインドシナ地塊下にもぐり込んだと考えられ,現状では,深部までの大陸沈み込みの証拠は認められない. これらは,一般にパンゲア形成期(2億5千万年前)に生じたと考えられているアジア地域の微小大陸衝突事変が,インドシナ半島という非常に限られた地域においても5千万年もの年代ギャップが存在することをあらわす.また,インドシナ地域においては,より早期に衝突を開始した地塊の方が,より深部まで沈み込んでいるという事実が明らかとなった.このことは,未だ明らかとなっていない超大陸形成メカニズムを解明する上で,重要なデータを提供するものと考えられる.
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