研究概要 |
Braarudospahera属は沿岸生の円石藻だが,K/Pg絶減の直後やOligocene Diversity Minimumのような多様性が著しく下がった期間に限って,外洋でも大繁栄した歴史がある.そのためBraarudospahera属は,貧多様性海洋を特徴づける種群である可能性が高い.本年度は,1)Braarudospahera属の多様性と環境変動の関係を化石紀録に基づいて解明すること.2)Braarudospahera属の起源を細胞構造に基づいて検証すること,を目的に以下の研究を行った. 1)北西大西洋の外洋域から採取されたODP leg 164深海底コア試料中のBraarudospahera属化石の形態測定を行い,Braarudospahera属化石のサイズ組成の変遷を詞べた.そして,2.5-1.7Maにかけて,Braarudospahera属化石のサイズレンジが大幅に拡大していたことを明らかにした. Braarudospahera属のサイズの違いと遺伝学的多様性(種分化)には密接な関係があることが知られている(Hagino et al.2009).そのため本研究で観察されたサイズの多様化は,Braarudospahera属が2.5-1.8Maの間に種分化していたことを示唆している.2.5-1.8Maは,第三紀を代表する様々な円石藻の種が絶減し,外洋の円石藻の多様性が低下した時期である.よって,この時期におけるBraarudospahera属の多様化は,外洋の貧多様化と関連づけられると可能性が高い.以上の結果を論文発表に向けて準備中である. 2)鳥取県東伯郡湯梨浜町において現生Braarudospaheraを採集し,透過型電子顕微鏡観察を行った.以上の結果を論文発表に向けて準備中である.
|