| 研究概要 |
化石化した生物体硬組織の成長に伴うフォルム変化に, "呼吸"の機能的意義を"代入"することで, 化石生物の運動特性を定量的に推定してゆくことが本研究の目標である. 従って, 呼吸機構を踏まえた上でのデータ解析が求められる. 本年度に三葉虫の呼吸機構に関するSuzuki et.al., 2008とSuzuki & Bergstrom 2008の論文が出版され, 本研究課題の根幹が盤石となった. 次の段階として, 三葉虫種Stenopareia oviformisの精密な三次元形状スキャンを行ったのち, 呼吸領域および鰓静脈領域のそれぞれ表面積と体積の算出を行った. 同一種でサイズが異なる標本群で同様の値を求め, 成長に伴う変化率を算出することを目的としている. 三葉虫の外骨格は, 頭部, 複数の胸節, 尾部と複数の硬組織パーツを有するため, 体積および表面積算出に至る行程を各パーツで行わなくてはならない. 現在は尾部のみの比率がアロメトリー値として求まった. それに基づくと, 鰓静脈領域が呼吸領域に対して1.25の比で成長に伴う増加傾向を示すことが明らかとなった. これは, 生物体が急に動く, 例えば外敵の攻撃からの逃避や防御行動に役立つことを示していると考えられる. 同様の傾向が頭部や胸部でも認められるのかについては, 現在進行中である.
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