研究概要 |
本研究の目的は,「温室地球」から「氷室地球」への転換点である始新世/漸新世境界(約3,300万年前;以降E/O境界)付近で,現在の海洋一次生産の25%以上を担う珪藻キートケロス属が渦鞭毛藻類に替わって沿岸生態系の主要な一次生産者と進化していった過程を解明し,さらに過去の地球環境変動が一次生産者や高次生物の進化に影響を与えた可能性を探ることである. そこで,本年度は昨年度に引き続き,これまで行ってきた北極海(IODP302),赤道東大西洋アフリカ南東沖(DSDP Sites 366 & 369)から採取されたボーリングコアサンプルの検討を行うとともに,陸上サンプル(北海道厚内付近),三陸沖(DSDP Site 584)コア,赤道東太平洋(ODP Site 682)を用いて,珪藻,ナノプランクトン化石生層序によるコアの正確な年代を決定し,各一次生産者プランクトン化石からこの地域の古環境変動を明らかにすることを目的とし,研究を行いった.本年度では,それらの年代の決定と,これまで明らかになっていない本調査海域の休眠胞子化石分類・生層序の確立・群集変遷の解明を行った.現在それらの成果を論文化し発表するための準備を行っている. これらの成果はこれまで正確な年代がわからなかった本コアの年代を,珪藻・ナンノプランクトン化石を用いた複合年代生層序により決定しただけでなく,この時代に非常に狭い範囲で湧昇イベントが起きていたという新事実を明らかにした.また,E/O境界の前後だけでなく,いくつかの時代で特徴的に珪藻キートケロス属が急増している事実を突き止め,本属が海洋一次生産者の中で重要な位置を占めるようになる過程を明らかにした.
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