研究概要 |
北ベトナムのランソン省に分布する下部三畳系で地質調査を行ない,二枚貝やアンモナイトなどの大型化石とコノドント,放散虫,オストラコーダなどの微化石を複数のセクションで大量に採集した.これらの化石からランソン層の大部分は,インデュアン階からオレネキアン階下部であり,バックテュイ層は,オレネキアン階下部の中部(スミシアン階中部)からオレネキアン階上部の下部(スパシアン階下部)であることが明らかになった.さらにアンモナイトや二枚貝は,南中国やインドなどと共通する三畳紀のテチス海東域に特徴的な種が主体であるが,北米やヨーロッパと共通する種や折縁たグループも含まれていることが分かった.また.二枚貝化石の構成は、三畳紀中期めものと全く異なっており,三畳紀前期の二枚貝類との共通性が高い.放散虫化石は,テチス海東域でも東南アジアや南中国に特徴的なグループが多産した. 中部三畳系については,中部ベトナムのテンホア省で調査を継続し,産出したアンモナイトや二枚貝化石の一部を報告し,中部ベトナムに広く分布するクイラン層の地質年代が中期アニシアン期の後期であることを明らかにした.また,クイラン層から産出する二枚貝化石の構成は,北部ベトナムのナーコット層のものと極めて類似していることを確認し,その堆積環境は典型的な波浪卓越型の陸棚であることが分かった. 下部~中部三畳系の二枚貝類の放散現象については,19年度と20年度までの研究結果をまとめて公表したが(この研究成果の具体的な内容については,昨年の研究実績報告書に記入済み),この研究ではオレネキアン階や中部ベトナムのデータについて.詳しく報告していなかったため,現在,これらのデータを加えた論文をまとめている.
|