研究概要 |
北部ベトナムには,下部~中部三畳系の陸棚上に堆積した波浪堆積物が広く分布し,ペルム紀末期の大量絶滅後の回復から放散を示すテチス系の二枚貝化石を多産する.この研究では,化石の保存状態や産状から優先的あるいは特徴的な二枚貝類の生息域を復元し,下部三畳系ランソン層と中部三畳系ナーコット層の二枚貝化石群(群集)を識別した.その結果,下部三畳系の二枚貝化石群のうち,波浪限界よりも浅い環境では,表生種のClaraiaやTowapteria,Eumorphotisが主体で,これよりも深い環境では,Claraiaが卓越することが明らかになった.その一方で,中部三畳系では,内生種が卓越し半内生種や表生種を伴うことや,種の多様性が非常に高いことが明らかになった.ナーコット層の波浪限界よりも浅い環境では,Costatoria goldfussiやTrigonodusなどの内生種が特徴的で,波浪限界よりも深い外側陸棚環境では,Costatoria paucicostataと半内生種のHoernesiaが多産することが分かった.この結果は,ペルム紀末期の大量絶滅後の内生二枚貝類の回復が表生種と比べて明らかに遅れていることを示している.
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