研究課題
深海底の堆積物-水境界における化学環境勾配と底生有孔虫類の代謝活性、それに付随する有機物消費過程を明らかにするため、現場及び室内における培養実験とその解析を行った。海底の酸素濃度が高く、堆積物中に顕著な酸素勾配の発達する日本海隠岐堆において、2009年9月に行われたNT09-16なつしま航海で現場培養実験を行った。酸素濃度や栄養塩などの化学環境データの取得のほか、底生有孔虫やバクテリアの活性を調べるための堆積物試料を採取した。予察的な結果では、酸素濃度の低い相模湾、アラビア海に比べ、特定の微生物群集の活性が高いことが示唆された。現在、実験中の酸素濃度、栄養塩濃度の変化などのデータと合わせて検討を行うとともに、微生物データの追加や、さらなる培養実験などを行い、酸素に富んだ日本海海底における環境と底生生物活動に関して考察を行っているところである。また、堆積物中の異なる化学環境に生息する底生有孔虫の有機物消費量と代謝活性を調べるために、2009年5月の青鷹丸航海で相模湾から採取した深海堆積物と有孔虫を用いて、室内培養実験を行った。その結果、酸素濃度の低い堆積物深部に生息する一部の有孔虫種が、その他の種とは異なる代謝経路をもっている可能性があることが示唆された。これは、堆積物深部の貧酸素、もしくは貧栄養状態への適応と思われ、堆積物中の化学環境が底生有孔虫の代謝経路やその活性に影響を与えていることを、定量的に明らかにした。
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Earth, Life, and Isotopes (印刷中)
Proceedings of OceanObs'09 (印刷中)
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