研究課題
本研究では、マグマ溜りにおけるマグマが、どのような時間スケールで冷却するのかについて、定量的な理解を得ることを目的としている。今年度は主に(1)利尻島に産する厚い玄武岩溶岩流を対象とした、マグマ冷却時における固液分離過程の考察、及び(2)アイスランド・アスキヤ火山における、マグマの組成進化の時間スケールの推定を行った。まず(1)については、利尻島において野外調査を行い、厚さ約6mの溶岩流から追加の試料採取を行った。これらの岩石試料の全岩化学組成を解析した結果、溶岩流の上部と下部に、部分溶融体からの液相の分離によってそれぞれ形成されたsegregation layerとsegregation cylinderは、大きく化学組成が異なっていることが明らかになった。これは、溶岩流の上部では、斜長石・単斜輝石・カンラン石から成る結晶のframeworkから液相が抽出されたのに対し、溶岩流の下部では、底部からの冷却に伴って濃集した気泡の存在により、カンラン石が結晶のframeworkに取り込まれることができず、斜長石・単斜輝石から成るframeworkから液相+カンラン石が抽出されたためであることが分かった。以上の結果から、気泡の有無によってマグマの分化トレンドが大きく変化する可能性を明らかにした。また(2)については、岡山大学地球物質科学研究センターで過去に分析したデータと、U-Th-Ra系の放射壊変・結晶分化作用・地殻物質の混染作用を考慮した質量保存モデルを比較することにより、玄武岩質マグマからアイスランダイト質マグマまで、3000年以内に組成進化したことを明らかにした。
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Lithos 110
ページ: 247-261
Lithos 112
ページ: 247-258
http://www.ganko.tohoku.ac.jp/touko/kuritani/index.html