研究概要 |
地殻においてき裂は物質・エネルギー移動の重要な通路である。地殻岩石には主に石英によって充填されたき裂が普遍的に存在する。このような石英脈は、非常に多様な組織を持っており、地殻内部の流体移動場の物理・化学条件に対する有益な情報を含んでいると考えられる。本研究では、実際にシリカに過飽和な流体から岩石表面にシリカ鉱物を析出させる実験を行った。 本年度は、流通式反応器の設計・製作を行い(長さ55cm、内径1.08cm、ステンレス製)、430℃、30MPaという条件下において2-7日間で組織観察をするために十分な量(〜4g)のシリカ鉱物を析出させることに成功した。シリカに過飽和な溶液は石英、花崗岩、またはアモルファスシリカを360-370℃、30MPaの条件下で溶解させて作成し、430度における石英の溶解度に対する過飽和度は3-5である。析出物をX線回折と顕微ラマン分光分析によって同定した結果、オパールA(アモルファスシリカ)、オパールC(クリストバライト)、石英、モガナイトという4種類のシリカ鉱物と長石であった。析出物の量は流路の中心部で最も多く、出口付近では析出は起こっていない。入り口と出口における溶液組成と、それぞれの場所での析出量から反応管通過時の溶液組成の変化を導出した。析出物の種類と組織は、シリカ過飽和度、微量元素(Al, Na, K)の有無、そして析出場所によって変化することが明らかとなった。主な特徴としては、(1) Si単成分流体の実験では、オパールAとオパールCが支配的なのに対して、花崗岩を溶解させた多成分流体では石英が支配的であること、(2) 過飽和度が1.5以下の低濃度領域では石英表面からの析出のみがおこるということである。
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