研究概要 |
昨年度に引き続き、流通式水熱反応装置を用いて430℃,31MPaの条件下において、人工的に石英脈を作成し、その組織発達、反応速度を明らかにした。また、シリカ鉱物析出に伴う組織と鉱物種の変化を支配する要因について考察し、また、天然の鉱物脈組織との対応を行った。 実験結果として、溶液組成(Si濃度と微量元素)の変化に伴って変化することを明らかにした。Si単成分の溶液からの析出では、Si濃度が下がるに伴って、支配的な鉱物はopal-A→low-ordered opal-C→opal-C→quartzと変化する。一方、微量のAl,Na,Kを含むようなSi過飽和溶液からはopal-Aは析出せず、石英とカルセドニーが支配的であった。このような傾向は、核形成プロセスと各シリカ鉱物の析出速度によって説明することができる。均質核形成の理論によると、アモルファスシリカは核形成することができるが他の多形鉱物は界面エネルギーが大きいために核形成しない。しかし、opa-Cや石英は、準安定な他の鉱物の表面を使うことによって核形成する。一方、溶液中に不純物が入る場合、準安定なオパールは析出せずに直接石英が核形成する。このような不均質核形成のプロセスはPotts modelを用いたモンテカルロシミュレーションによって明らかにした。また、一度、核形成が起こると表面における各シリカの析出速度が濃度と比表面積に支配されて変化し、観察されるような流路に沿った鉱物種の変化が起こることを明らかにした。 一方、石英に対して過飽和度の低い領域では、核形成やオパールの形成は起こらず、既存の石英表面からの成長が進行する。このような表面からの成長と核形成は異なる鉱物脈組織を生み出し、逆に鉱物脈の組織は溶液の組成の良い指標になることを示唆する。
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