研究課題
1. 茶色のカンラン石を含むいくつかの火星限石(特に、レールゾライト質シャーゴッタイトとカンラン石フィリックシャーゴッタイト)をTEM(日本電子製JEM-2010)により観察・分析を行なった。その結果、茶色の呈色の原因として10~20nmの大きさの鉄ニッケル合金、もしくはマグネタイトのナノパーティクルがカンラン石中に含まれていることが分かった。これは、これまでに行った他の火星隕石の分析結果と一致していた。2. 物材研で、加熱して衝撃実験を行ったカンラン石粉末試料をTEMにより観察した結果、マグネタイトではなく、鉄ニッケル合金のナノパーティクルが含まれていることが分かった。このことから、火星隕石中に含まれるナノパーティクルの鉱物種の違いは、酸素分圧ではなく、温度上昇の違いによってもたらされた可能性が示唆された。3. 茶色のカンラン石を含むいくつかの火星隕石を赤外顕微鏡(日本分光製IRM-3000)で分析し、カンラン石の赤外域での反射スペクトルを得た。この結果、1050cm^<-1>付近で見られるピーク強度に色の強さとの相関性が見られた。4. 2008年10月に地球に落下した小惑星2008TC_3の鉱物学的研究を行った。Almahata Sittaと名付けられたこの隕石は、火星隕石と同様に黒色化したカンラン石を含むが、この隕石はポリミクトユレイライトであり、黒色化の原因は炭素物質と還元により生じた鉄ニッケル合金によるものであった。輝石の微細組織から、平衡温度と冷却速度を見積もったところ、それぞれ、1240-1280度、0.2-5度/時間であった。これらの値は、これまでに他のユレイライトで報告されているものとよく一致した。このことは、ユレイライト母天体が高温時に衝撃破壊を受け、その後、再集積を行ったことに対応しており、小惑星2008TC_3はその表層付近に位置していたものと考えられる。
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