研究課題
本年度は、前年度に内熱式ダイアモンドアンビルセル(diamond anvil cell -DAC-)実験により決定した純鉄の相平衡および格子体積データを基に、地球中心(圧力=364万気圧、温度=5000~7000ケルビン(K))まで適用可能な純鉄の熱力学データセットを構築した。その際、液体鉄の圧力-体積-温度(P-V-T)状態方程式を見積もった。液体鉄の密度は地球中心核の密度を議論する上で非常に重要であるが、限られた温度圧力範囲でしか実験データが存在せず、既報の状態方程式には大きな仮定が導入されていた。そこで本研究では、融解曲線(温度-圧力)を1気圧~200万気圧まで再現するように方程式のパラメタを調整した。相平衡計算により、地球の固体内核の安定相はHCP(六方最密構造)相であり、固体内核-液体外核境界圧力(330万気圧)におけるその融点は4900Kである。核の密度欠損は、外核で8.1、内核で5.3wt.%とそれぞれ見積もられた。しかし、本研究で見積もられた330万気圧における鉄の融点(4900K)は衝撃圧縮実験から報告されている温度(6000~7000K)に比べてはるかに低い。そこで、HCP相の高圧相(従来から議論されているBCC(体心立方構造)相とした)の存在を仮定し、衝撃実験の融点を再現するようにこの相の熱力学パラメタを見積もった。結果は、この高圧BCC相はHCP相に比べて高いエントロピーを持つ相であることがわかった。今後、実験による高圧BCC相の探査が待たれる。この結果は国際誌Journal of Geophysical Research誌に印刷された。本研究により決定された純鉄の相平衡関係や相の状態方程式は、核の熱力学を議論する際に重要なデータセットとなる。また、核に溶け込んでいる軽元素の種類と量の特定のためにも重要なデータとなる。
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Journal of Geophysical Research(Solid Earth) 115
ページ: doi:10.1029/2009JB006442