研究概要 |
平成20年度は野外調査、岩石組織の記載、全岩化学組成分析、数値シミュレーション手法の開発を行った。野外調査の結果、小豆島西部に位置する皇踏山溶岩流内では、層序的下位から高マグネシアン安山岩からデイサイトへと全岩組成、斑晶組み合わせが漸移的に変化することが分かった。また、残液濃集層は約5mm間隔で面構造を作り、それらは10-20度の傾斜を示す。一方、岩石組織の記載については、電子線後方散乱回折像法(EBSD),マイクロX線CT,FE-SEM、カソードルミネッセンスを用いて、石基斜長石の形態、石基を構成する長石や輝石の定向配列、メルトチャネルの形態、メルト絞り出し組織形成時の結晶量を明らかにした。これらの情報から、残液絞り出し組織の幾何学的特徴が明らかとなった。また、21年度の予定を前倒しして、有限要素法および個別要素法を用いた数値シミュレーションを始めた。その結果、1)剪断歪に伴って、結晶密度の高いクラスターと、相対的にメルトに富む残液濃集層との層状構造が、最大圧縮軸とほぼ平行に形成されること、2)剪断歪に伴うクラスターの回転によって、クラスターと残液濃集層の形成-破壊が周期的に起こることが分かった。このシミュレーション結果を野外調査、ファブリック研究から得られた情報と合わせることで、溶岩流で観察される2方向の残液濃集層が、回転に伴って消滅しつつある残液濃集層と、新たに形成された残液濃集層に対応していることや、溶岩滝が現在の山頂付近に噴出中心をもち、東へ流下したことが明らかとなった。
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