溶岩流の流動特性や組織の発達過程を明らかにする上で、個別要素法と数値流体力学モデルをカップリングさせた数値シミュレーションは有効な方法である。今回、粒子間の相互作用を支配する反発係数や摩擦係数を変化させ、それらが組織や粘性にどのような影響を与えるか検討した。その結果、粒子間の衝突や摩擦に伴うエネルギー散逸が大きいほど、接触粒子数や粒子クラスターのアスペクト比、クラスター強度が増加した。クラスター強度の増加は、さちに応力鎖ネットワークの発達を促し、分散系の粘性増加をもたらしている。こうした粒子間エネルギー散逸の増加がもたらす変化は、分散系の粒子数を増加させたときに見られた組織、粘性変化に対応している。また、組織や粘性に影響を与えるクラスターの強度は、クラスターを構成する粒子の方位と密接な関係にあることがわかった。クラスターを構成する粒子の長軸が剪断面により高角度で斜交するほど、クラスターは壊れにくくなっている。これは接触する粒子の方位と剪断歪によって生じる主圧縮応力軸との幾何学的関係から理解できる。今回行った数値シミュレーションでは、シミュレーション法による制約から、天然の溶岩流に比べて、4-8桁大きな歪速度、6-7桁低いメルト粘度を用いている。こうした条件の違いにも関わらず、数値シミュレーションで、天然の溶岩流に類似した組織が形成された。このことは、分散系の組織がメルト粘性や歪速度の値よりも、クラスターの壊れやすさとできやすさのバランスでコントロールされていることを示唆している。
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