マグマ中の揮発性成分含有量はマグマの生成条件や噴火に伴う表層環境への影響を知る上で最も重要な要素の一つである。しかしながらその定量的な見積もりは困難を極める。クロムスピネルのメルト包有物の研究は初生マグマの揮発性成分の定量的な見積もりに大変有効であるが、そのメルト包有物は通常10-20μmと小さいためNano-SIMSによる測定が必要である。本年は東京大学海洋研究所のNano-SIMSによる微小領域の揮発性成分の分析法を確立するため、スタンダードガラスの作成をおこなった。本分析法開発において最も重要なのは揮発性成分(水、二酸化炭素、フッ素、塩素、硫黄)が既知で様々な濃度のスタンダードガラスを用意することである。様々な揮発性成分の濃度に調整したスタンダード玄武岩質ガラスを東京工業大学のピストンシリンダーを用いて作成し、ガラス中の塩素、硫黄と水、二酸化炭素の均質性をそれぞれ海洋研究開発機構のEPMA(X線マイクロアナライザー)とFTIR(フーリエ変換赤外分光光度計)でチェックしてガラス作成の最良な条件を見つけ出した。それと同時にNano-SIMSによる測定条件に関しても模索していて、二酸化炭素以外は適切な測定条件を見出した。それにより、10μm程度の領域で数%の精度で分析可能になった。6種類のスタンダードガラスが揃い、粉末化して揮発性成分の定量分析をガスクロマトグラフィとイオンクロマトグラフィを用いておこなう準備を進めている
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