マグマ中の揮発性成分含有量はマグマの生成条件や噴火に伴う表層環境への影響を知る上で最も重要な要素の一つである。しかしながらその定量的な見積もりは困難を極める。クロムスピネルのメルト包有物の研究は初生マグマの揮発性成分の定量的な見積もりに大変有効であるが、そのメルト包有物は通常20μm以下と小さいためSIMSによる測定が必要である。本分析法開発において最も重要なのは揮発性成分(水、二酸化炭素、フッ素、塩素、硫黄)が既知で様々な濃度のスタンダードガラスを用意することである。平成21年度は引き続きスタンダードガラスの揮発性成分の定量分析を試みた。水、二酸化炭素に関しては粉末化したガラスを酸化亜鉛とともに石英管に封緘し、電気炉で燃焼後、マノメトリーを用い定量分析を行った。また、フッ素、塩素、硫黄濃度に関しては、酸化バナジウムとともに燃焼し、溶液にトラップした後にイオンクロマトグラフィーを用いて行った。しかしながらブランクの問題や回収率の問題があり、現在もその改善に模索しているところである。平成21年度は本研究の核となるコロンビアゴルゴナ島のクロムスピネル中のメルト包有物の揮発性成分に関する論文が国際誌に掲載された。また、スタンダードガラス作成中に派生した研究テーマとして、酸に難溶融なジルコンなどの鉱物を含む花崗岩などの岩石の画期的な処理法(1600℃の電気炉で岩石粉末のみを短時間で融解し、その後酸分解をするフラックスフリーフュージョン法)やコマチアイトと熱水の反応実験に関する論文も国際誌に受理、掲載された。
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