近年有害陰イオンによる水・土壌汚染が世界的な問題となっている。東南アジア地域における井戸のヒ素汚染、アメリカ西部や中国の炭鉱付近のセレンによる土壌汚染、放射性廃棄物として地層に処分が提案されている超半減期性陰イオン種のセレンやヨウ素の移行評価などがその例である。天然水中における陰イオン種の主要な固定機構は鉱物表面への吸着反応であり、鉱物表面における陰イオンの表面化学種(結合形態)の理解は吸着状態の安定性や吸着後の長期評価にとって必須である。吸着陰イオンのその場分光測定と表面錯体モデリングを手法として、水質変化に伴う水一鉱物界面における陰イオン種表面化学種分布を系統的に明らかにすることを目指している。 フェリハイドライトは水圏環境に広く産出する酸化物であり、大きな比表面積を有するため天然における優れた陰イオンの吸着体であることが知られる。硫酸イオンは比較的高い化学的活性を持ち、かつ赤外分光に対してセンシティブな陰イオン種である。本年度はその場赤外分光分析(FTIR)における減衰全反射(ATR)法を確立し、pHやイオン強度の変化に伴う水-フェリハイドライト界面における硫酸イオンの結合状態をその場観測を行った。またフェリハイドライト-硫酸系における酸塩基滴定とその表面錯体モデリング(Extended Triple Layer Model : ETLM)により硫酸イオンのFh表面における化学種分布の予測を行い、ATR-FTIR分析によって認められた結果と比較した。本年度はフェリハイドライト界面におけるヨウ化物イオンの表面化学種分布の検討と、稀少炭酸塩鉱物モノハイドロカルサイトによるヒ酸取り込み挙動に関する検討も行った。
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