研究概要 |
当該年度では,地球生物圏の構造,代謝,生理機能に本質的に関わるアミノ酸の立体異性体について,新しいジアステレオマー法を開発し,ガスクロマトグラフ/燃焼/同位体質量分析計を用いて,個々の異性体分子レベル安定同位体比(個々のD-体とL-体に対応した安定同位体比)を解折する方法を確立した(米国化学会の専門誌に掲載[1].自然界の代表的試料として,生物プロセス(真核の単細胞生物,真正細菌,古細菌の3つの生物界の代表的試料),化学プロセス(有機合成反応)の評価を行い,同位体組成の均質性と不均質性を規定する因子が,生体内での立体反転反応に関する酸素反応に依存すること(専門誌で投稿中)を見出した.また,イオン交換クロマトグラフィーの前処理法を適確に行なうことにより,元素分析/同位体質量分析計と1:1で対応する整合的な窒素同位体比が得られ,鉱物マトリックスの多い堆積物・岩石試料や,考古学試料,生物化石試料など,鉱物学,考古学,古生物学的な多様な試料要求に際しても評価が可能になった.次年度は,それらの代表的アプリケーションの知見を深めていく.それらの基礎的記載により,幅広い自然界の試料への応用的展開を図ることが可能となり,生命科学と地球科学とをリンスする分野横断的な波及効果があると考えられる. [1]Takano Y., Chikaraishi Y., Ogawa O. N., Kitazato H., and Ohkouchi N. (2009) Compound-specific nitrogen isotope analysis of D-, L-alanine and valine: application of diastereomer separation to delta15N and microbial peptidoglycan studies. Analytical Chemistry 81, 394-399.
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