本研究の目的は、超流動ヘリウムの冷たく静寂な表面に、プラズマで帯電させた微粒子の2次元結晶を生成し、さらにそれとプラズマとの相互作用を議論することである。昨年度までに、放電中の液体ヘリウム温度の上昇を極力抑えられるような放電システムの構築を完成させ、生成した放電プラズマ中で電荷をもった微粒子の帯電量測定の予備実験を行った。結果として、極低温環境下での微粒子帯電量は、室温環境と比べて2桁程小さいことを見出した。これは、イオン-中性ガス粒子間の衝突が頻繁であるために微粒子表面へのイオン流入量が変化して帯電量が変化したものと考えられる。また、イオンと雰囲気ガス粒子とが熱平衡にあると考えられるので、イオン温度は雰囲気ガス温度(10K以下)まで低下していると考えられ、このイオン温度低下もまた帯電量減少に寄与していると考えられる。また、プラズマと液体ヘリウム表面の間の空間には大きな温度勾配が存在することが分かり、本年度の予備実験において、この温度勾配が生み出す熱泳動力が微粒子の運動に大きく影響を与えるという結果を得た。また、昨年度新規に購入したクライオスタット(オックスフォード・インストゥルメンツ社製Optistat CF)を改良し、安定にプラズマを生成して微粒子をプラズマ中に投入するシステムを作成した。液体ヘリウム中に落下していく微粒子の観測を行ったところ、帯電した微粒子は液体ヘリウム中を5mm/sec程度の速度でゆっくりと落下した。次年度以降に向け、帯電微粒子を液体表面近傍に捕捉するシステムの作成中である。
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