高融点半導体材料に対してアニール処理を同時に行えるパルスイオン注入の実証実験を行うためには、これまで開発してきたパルス重イオンビームの純度をさらに向上させる必要がある。本研究の目的は、ビーム純度をさらに向上させることができる両極性パルス加速器技術を確立し、パルスイオン注入の実現に向けた知見を得ることである。両極性パルス加速器の原理は2段の静電加速であり、この多段加速を行うことでイオンの質量差で生じる速度差を利用することで、特定のイオン種のみを選択的に加速させることができる。そのため、不純物イオンが除去され、ビーム純度を向上させることができる。今年度は、開発した両極性パルス電源を装置に組み込んで両極性パルス加速器の実証実験を行った。 両極性パルス加速器は接地された陽極、ドリフト管、接地された陰極、磁気絶縁加速ギャップから構成されており、ドリフト管は両極性パルス電源に接続されている。イオン源には窒素ガスパフプラズマガンを用いた。両極性パルス電圧をドリフト管に印加したとき、イオン電流密度〜10A/cm^2、パルス幅〜30nsというパルスイオンビームを得ることができた。飛程時間差法からイオン種、エネルギーを評価した結果、特定のイオン種(窒素イオン)のみが加速されていることがわかり、パルス重イオンビームの多段静電加速を実証することができた。来年度は、ビーム電流の増加、ビーム純度の測定を行い、半導体への照射実験を行う予定である。
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