本研究の目的は、「レーザー航跡場で、イオンが直接加速可能であることを実証する」ことである。2ビームビート波レーザーを対向照射することにより、重イオンプラズマ中に位相速度の遅いプラズマ波を外部強制振動により励起する。エネルギー50keV以上の陽子が捕獲されうる位相速度の遅い進行波プラズマ波を制御することを目指す。イオン(陽子)をプラズマ波によって加速するためには、以下3つの課題を明確にする必要がある。I. 位相速度の遅い重イオンプラズマ波の励起、II. 重イオンプラズマ波へ陽子の入射とその加速実証、III. 加速陽子をプラズマ波に捕獲及び加速し続けるための、プラズマ密度、加速電場強度及び位相速度の制御。本研究期間内では、Iに着手した。位相速度の遅いプラズマ波をビート波レーザーにより、外部制御して励起することを目指す。その為に、2段階のハードルを設けた。1. レーザー伝搬軸に沿って均一密度プラズマを生成する超音速ガスジェットを準備する(H20年度)。2. 対向照射することにより、位相速度の遅い進行プラズマ波(遅波)の励起(H21年度)。平成20年度は、超音速ガスジェットターゲットを整備し、レーザー粒子加速実験に供した。さらに、対向照射系の実験セットアップを構築し、対向照射実験を実施した。主レーザーと対向照射レーザーの時間差及びポインティングの調整により、大気中において2つのレーザーを集光点付近で衝突させることに成功し、対向照射実験の指針を得た。さらに、遅波励起の検出のための広帯域分光器を整備した。
|