光誘起相転移やアブレーションに伴う固体表面の過渡現象を、ピコ秒の時間分解能、ナノメートルの空間分解能(深さ方向)にてシングルショット観測するための計測手法として、波長13.9nmの軟X線レーザーをプローブ光として用いた干渉計の開発を行った。装置構成は、まず軟X線レーザーをサンプルとなるシリコンにて反射させ、このシリコン表面の像を焦点距離250mmの球面境にて倍率20倍にてCCDカメラ上に結像する。球面境には軟X線レーザー反射のためにMO/Si多層膜コートを施工した。途中、反射角を0.05°程度ずらした2枚のミラー(Lloyd'sミラー)にてビームを分割し、CCDカメラ上で重ね合わせる事により干渉縞を得る。今年度は、光学系、及びサンプルや球面境の素子を外部駆動するための機構の設計を行い、本装置を構築した。また、実際に軟X線レーザーを用いた立ち上げ実験を行い、設計値通りの干渉縞を得ることに成功した。デモンストレーションとして、軟X線レーザーと時間同期した赤外光レーザーパルス(パルス幅〜500ピコ秒)にてサンプルをポンプするポンプ&プローブ計測を行い、シリコン表面のアブレーションに伴う形状変化に対するデータを取得した。得られたデータについては現在解折中であるが、今回開発に成功した計測、手法により、ピコ秒の時間分解能にて物質表面の過渡的な微小変位の観測が可能となり、固体物性研究に新たな展開をもたらすものと期待される。 本研究に関して、2008年8月に英国、ベルファストにて開催された第11回X線レーザーに関する国際会議にて口頭発表を行った。
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