本年度は、搬送波位相制御レーザーパルスを用いた多光子顕微鏡の開発を行うために、搬送波位相制御レーザーパルスの性能評価を行った。発振器の出力について、長時間(約1日)、搬送波位相制御が行うことができることを確認した。しかし、出力が多光子吸収を誘起するには不十分であったことから、再生増幅器およびマルチパス増幅器で発振器出力を増幅後、増幅出力の搬送波位相を制御することとした。増幅出力の搬送波位相は、f-2f干渉計で計測を行い、現在のところ、300mradの位相誤差で1時間ほど制御できることを確認した。増幅後のパルス幅は、最短で30fs程度であり、搬送波位相の効果は小さく、三次元多光子顕微鏡を作成するにはふさわしくない。そこで、搬送波位相の効果が顕著に表れてくるサブ7fsの極短パルスの発生を目的とし、ホローファイバーパルス圧縮器の製作およびその性能評価を行った。その結果、3mJ(45fs)の入力に対して、2mJのサブ10fsパルスの発生を確認した。しかしながら、顕微鏡用途で用いるためには、パルス圧縮後のポインティング安定性および出力安定性が不十分であったことから、ファイバー入射前の光のビームポインティングおよび出力の能動的制御を現在検討している。また、サンプル中において最短パルスを達成するためには、あらかじめレーザー光がサンプルに到達するまでに加わる正分散を補償する必要があることから、負チャープミラーの反射回数を変化させることと、一対のウェッジ板で可光路長を微調整することを組み合わせることによって、システム全体に加える負分散量の調整を可能とした。
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