レーザ電場の位相(絶対位相)が固体中の超高速キャリア・フォノンダイナミクスをどのように支配するか明らかにするため、初年度は時間分解反射率測定装置の立ち上げ、および性能評価を中心に行った。 1.時間分解反射率測定システムの構築:sub-10 fsレーザを用いて、時間分解反射率測定装置を製作した。製作した装置を用いて代表的な半導体であるGaAsからのコヒーレントフォノンの信号を観測することができた。 2.時間分解能の評価:装置の時間分解能を評価するために、理論上の測定限界である振動周期(20 fs)を持つ炭素系化合物(グラファイトなど)で時間分解反射率測定を行った。炭素間伸縮振動に由来するコヒーレントフォノンの信号を測定することが出来た。このことから、立ち上げた時間分解反射率測定装置において、測定限界の時間分解能が達成できていることがわかった。 3.ドープしたSiにおけるコヒーレントフォノンの観測:立ち上げた時間分解反射率測定装置の信号対ノイズレベル(S/N)の評価を行うために、信号強度の弱いSiのコヒーレントフォノンの測定を行った。これまで報告されていた結果より、約10倍のS/Nの改善が見られた。またp型Siについて実験を行ったところ、Siのコヒーレントフォノンの生成において、非等方なホールが関与していることが明らかになった。 4.絶対位相制御光を用いた時間分解反射率測定装置システムへの改造:レーザの絶対位相を制御するためにレーザシステムの改造を行っている。絶対位相の影響がより効果的に現れると期待されるGaNなどのワイドバンドギャップ半導体について測定を行ったところ、より強い強度が必要であることがわかったため、現在、強度を増幅したレーザを用いた装置への改造を行っている。
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