本研究では、生体分子中のカルシウムイオンの動的挙動観測を目指した新規実験手法として、世界で初めてとなるタンパク質における固体カルシウム核磁気共鳴(NMR)法を開発する。そして、固体NMR法の最大の特色である分子の動的挙動の観測を試み、生体分子におけるカルシウムイオンの分子メカニズムの解明に挑戦をする。本年度の目標は低濃縮度のカルシウム43もしくは類似金属(MgやZn)の安定同位体標識手法の開発を行い、それら化合物を対象にしたカルシウム43(半整数四極子核)固体NMR法の開発および測定を行うことである。カルシウム43安定同位体は高価であるため、67Zn等を用いて低分子化合物を標識した。質量分析等の結果から標識は可能であることが分かったが、溶媒等で溶かす過程で化学交換がおこり標識率が低下する問題が発生した。その対処法については引き続き検討していく予定である。固体NMR測定は高磁場NMR装置(独立行政法人物質・材料研究機構の930MHz固体NMR装置)を用いて、低分子化合物を対象にした半整数四極子核固体NMR測定を行った。種々の実験条件の検討や得られた実験NMRスペクトルを解析するプログラム作成等を行った。
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