研究概要 |
前年度までに、PSiPピンサー型パラジウム錯体を触媒とすることで、1気圧の二酸化炭素雰囲気下、アレンのヒドロカルボキシル化反応が進行することを見いだした。そこで本年度はより汎用性の高い還元的アルキル化反応の開発を目指し、原料としてより入手容易な1,3-ジェン類を用いる実用的かつ高効率的なヒドロカルボキシル化反応の実現を目指し検討を行った。その結果、イソプレンに対し、THF中、1気圧の二酸化炭素雰囲気下、触媒量のパラジウム錯体をトリエチルアルミニウムとともに作用させると、ヒドロカルボキシル化反応が進行し、2,3-ジメチル-3-ブテン酸がほぼ単一の生成物として高収率で得られることを見出した。このときカルボキシル化における位置異性体は全く生成せず、なおかつ触媒回転数(TON)は274にまで達することが明らかとなった。本反応は鍵活性種として生じるピンサー型ヒドリドパラジウム錯体のジェンとの位置選択的なヒドロメタル化、ならびに生じるσ-アリルパラジウム錯体の多置換炭素上での位置選択的求核付加によって進行しているものと考えている。さらに本反応は、1,3-ブタジェンにも適用可能であり、2重結合の異性化を起こした(E)-2-メチル-2-ブテン酸が主生成物となるものの、カルボキシル化体をTON 524で得ることができた。以上のように、PSiPピンサー型パラジウム錯体を触媒とする、より反応性の高い高効率的な二酸化炭素の還元的アルキル化反応の開発に成功した。
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