本研究では、二級アミン型有機分子触媒であるビナフチル型アミン触媒を用いることで、従来のピロリジン型アミン触媒では困難とされる反応の精密制御を目指した。ビナフチル骨格の3位へ高い酸性度を有した活性化基であるトリフルアミド基を導入した触媒を用いて、ニトロソベンゼンによるアルデヒドに対する直裁的不斉アミノオキシル化反応を試みた。光学活性ピロリジン型触媒として用いた反応では、アルデヒドの直裁的不斉アミノオキシル化反応が高立体選択的に進行することが知られているが、触媒量を低減した場合、副反応や触媒の不活性化のために高収率で反応進行させることが困難である。そこで、触媒構造やその電子的性質の全くことなるビナフチル型アミン触媒を用いたところ、高収率、高エナンチオ選択的にアルデヒドのアミノオキシル化反応が進行することを見出した。本反応においては、エナミン経由型の反応としては極めて少ない0.2mol%という触媒量で良好な収率やエナンチオ選択性を実現することに成功した。また、本反応に用いたビナフチル型アミン触媒はピロリジン型アミン触媒と比較して穏やかな求核性を有しているため、高反応性の基質を利用する反応において、副反応の抑制が期待出来る。そこで反応性が高く反応の制御が困難とされるアセトアルデヒドを基質としたマンニッヒ反応に本触媒を適用してところ、良好な収率かつほぼ完全なエナンチオ選択性で目的の生成物を得ることに成功した。
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