研究概要 |
より高次構造を有するデンドリマー型巨大分子を用いた不斉自己触媒反応、さらには自己改善(鏡像体過剰率の向上)を伴う不斉自己増殖反応を実現する上で、触媒として作用するキラルデンドリマーおよび基質となるアキラルデンドリマーを精密に合成する必要がある。末端に3重結合を有するデンドリマー型アルキルシラン骨格へのピリミジン環の導入に際し、2位が塩素化したピリミジンと薗頭カップリング反応を行うことにより高効率的にヘキサピリミジン化合物を合成する方法を見出した。本方法により分子量3000を超えるデンドリマー型巨大分子の精密合成を可能とした。 まず分子内に高い不斉自己触媒活性部位を6つ有する(S_6)-ヘキサキス(ピリミジン)ヘキサアルカノールを合成した。異性体比は、(S_6)/(S_5, R)/(S_4, R_2)/(S_3, R_3)/(S_2, R_4)/(S, R_5)/(R_6)=93/6/-/-/-/-/-, 鏡像体過剰率>99.5%eeの化合物を不斉自己触媒として用い、6つの不斉中心を1回の反応で構築可能な不斉自己触媒反応を行った。対応するへキサピリミジンカルバルデヒドに対し10ml%の不斉自己触媒を用いジエチルエーテル中, 0℃で19.8等量のジイソプロピル亜鉛を作用した。新たに生成したヘキサアルカノールの異性体比は98/2/-/-/-/-/-、鏡像体過剰率は>99.5%eeであった。ヘキサキスピリミジルアルカノールを用いる不斉自己触媒反応において6つの不斉中心を1回の反応で構築することが可能な不斉自己触媒反応を見出した。今後は、低鏡像体過剰率の触媒を用い連続的に反応を行うことにより, 顕著な不斉の向上、さらには異性体比の改善を伴う不斉自己触媒反応を実現することを目指していく。
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