研究概要 |
アルキルシランデンドリマーの末端に不斉自己触媒活性を有するピリミジン部位を6つ有する巨大分子の不斉増幅、さらには異性体比の向上を伴う不斉自己触媒反応を行った。すなわち、薗頭カップリング反応によって高効率に得られたデンドリマー型巨大分子であるヘキサキスピリミジルアルカノール(鏡像体過剰率:59%ee,異性体比:(S_6)/(S_5,R)/(S_4,R_2)/(S_3,R_3)/(S_2,R_4)/(S,R_5)/(R_6)=6/10/23/29/21/8/1)を触媒として用い、対応するヘキサキスピリミジンカルバルデヒドへのジイソプロピル亜鉛の不斉付加反応を行った。その結果、一挙に6つの不斉点を構築する不斉イソプロピルか反応が進行し、鏡像体過剰率は75%eeにまで向上し、異性体比(S_6)/(S_5,R)/(S_4,R_2)/(S_3,R_3)/(S_2,R_4)/(S,R_5)/(R_6)=15/14/20/23/18/8/2でヘキサキスピリミジルアルカノールが新たに生成した。得られた化合物を次の反応の触媒として用いる連続反応を行ったところ、5回の繰り返し反応の後、鏡像体過剰率は99.5%ee、異性体比:(S_6)/(S_5,R)/(S_4,R_2)/(S_3,R_3)/(S_2,R_4)/(S,R_5)/(R_6))=98/2/-/-/-/-/-にまで向上することができた。ヘキサキスピリミジルアルカノールを用いる不斉自己触媒反応において6つの不斉中心を1回の反応で構築することが可能な不斉自己触媒反応を見出した。本反応は、低鏡像体過剰率の触媒を用い連続的に反応を行うことにより、顕著な不斉の向上、および異性体比の改善を伴う不斉自己触媒反応を実現することが可能となった。ヘキサキスピリミジルアルカノールは、自己増殖する巨大分子(イソプロピル亜鉛アルコキシドとして分子量3270)であり、自己改善能を備えた人口高分子であると言える。今後は、さらなる枝分かれ構造・繰り返し構造を有する巨大なデンドリマー型キラル高分子の合成を目標とし、不斉増幅、異性体比の向上を伴う自己改善型不斉自己触媒反応を目指して研究を進めていく。
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