分子内電子配置を変換するということは、その分子から電磁気的、あるいは光学的応答を引き出すために非常に有効な方法であり、またそうした情報は個々の分子に帰属するため情報密度としても非常に高いと言える。本研究において我々はそのような電子配置変換を、分子の機械的動作から引き出すという試みを行った。 機械的動作-電子移動の実現のために可能な限り分子のパーツを単純化を行った。中心となるのは回転動作の経路にCu(II/I)の配位子場を取り入れるというアイデアである。回転しとして二つの配位可能な窒素原子を持つピリミジン環を利用することで、検出可能な2状態の回転異性体を作り、また配位子の非対称性の持つ異なる立体効果によってCu(II/I)の酸化還元に由来する電子駆動力の違いを得ることができる。この構造をベースとして、回転運動の熱力学・速度論評価と立体構造のチューニング、回転が制御する電子駆動力の変化、回転部位を組み込んだ分子内電子移動系の構築、光誘起回転などを実現した。
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