研究概要 |
ホスト-ゲスト相互作用を利用したナノサイズ磁石(単分子磁石)の磁気的性質の変化を目指して、平成21年度は昨年度に引き続き、単分子磁石の包接体合成研究を進めた。昨年度はホストにゲストを取り込む反応が進行しなかったため、合成法の改良を行った。多孔性金属錯体(ホスト)の構築原料として、ゲストを取り込みやすい空孔を作るために比較的長い距離で金属イオンを連結する配位子(4,4'-bipyridineなど)を用いた。また、単分子磁石(ゲスト)材料としてはなるべく小さい分子(TbCu錯体、Mn2,Mn3,Mn4核錯体など)を用いた。合成方法は、ホスト原料(金属イオンと連結配位子)とゲスト分子を混合した多成分のワンポット反応によって、ホスト構築時にゲストを取り込ませる方法を引き続き検討した。原料同士の反応やゲスト単分子磁石の分解反応、カウンターイオンや配位子の交換反応が多く、目的とする包接体は得られていない。しかしネットワーク構造内に単分子磁石を埋め込むことに成功したので単結晶構造解析など各種機器分析で構造を明らかにし、単分子磁石挙動を磁化率測定によって詳細に調べた(論文掲載済み)。その結果、埋め込まれた単分子磁石は周囲の磁気的な影響をほとんど受けていないことが明らかとなった。これはネットワーク構造が反磁性であるため、単分子磁石への磁気的な影響が非常に小さくなったと考えられる。単分子磁石の磁性変化を目指すためには磁性ホストを用い、合成の観点からはホストゲストともに分解反応が起きない組み合わせが必要であるため、現在物質探索を進めている。
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